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第7回 「ヒトラーに抵抗した良心的な学生達から人間の精神を学ぶ」 県立広島大学教授 三原 博光

 私は、若い頃、ドイツの大学に留学し、ドイツの社会福祉について学んで来ました。第二次世界大戦中、ナチスのヒトラーは、約600万人のユダヤ人と10万人の障害者を虐殺しました。しかし、当時、彼の独裁に抵抗した良心的な軍人、市民、学生達の抵抗運動は全て失敗し、これらの人々は、全て処刑されました。
 そのなかで、有名な抵抗運動がミュンヘン大学の医学部の学生達の「白バラ運動」です。医師を目指し、将来、経済的に安定した生活を保障されていた医学部の学生達が、小さなビラを通して、一般市民や学生達の良心に訴え、ヒトラーの残虐性をやめさせようとしましたが、失敗し、全ての学生が処刑されました。
 しかし、彼らの悲劇的な死は戦後、評価され、ミュンヘン大学で追悼集会の開催、彼らのための記念碑も作られました。また、ドイツの中学校の歴史の教科書には、彼らの勇気ある行動と高貴な精神が紹介されています。
 この運動に参加した学生は財産、地位、名誉などは天国に持って行けないが、我々が独裁者からドイツを守ろうとした良心・精神を後世の人々に伝えるのではないかと考えたと思います。
 現在、あるいはこれから受験を目指し、少しでも良い大学へ行きたいという希望を持つ若い生徒の皆さんには、このようなドイツの悲惨な歴史にあまり興味がないかもしれません。人間、どのような立派な学歴、地位、財産を得たとしても、いつかそれを失う時が来ます。
 しかし、皆さんが一生懸命、生きた証は、ドイツの「白バラ運動」のように精神は、次世代に引き継がれて行きます。1度の自分の人生を大切に勉学に励んで下さい。

第8回